咆哮と彷徨の記録

                               

■『ナイチンゲールの沈黙』07/01/30UP



海堂尊 宝島社

歌声に秘められた特殊能力

『このミステリーがすごい!』大賞受賞作の『チーム・バチスタの栄光』の続編。

〜あらすじ〜

東城大学病院の忘年会で桜宮大賞を受賞した小児科の看護師浜田小夜、彼女はレティノ手術待ちの患者2名の担当だった。

前回のバチスタ事件のさいに活躍した不定愁訴外来の田口医師と厚生労働省の白鳥が再びコンビを組み事件の解決にあたる。

しかし、前作の田口医師の語り一辺倒から、一転、看護師浜田小夜の視点から大部分が語られる。

前作の魅力だった田口&白鳥の絶妙なやりとりは少なめに、新たに登場した加納警視正と玉村警部補コンビのやりとりが加わり、混沌としている。

前作が手術のように整然としていたが、本作は謎に包まれた登場人物が多く、物語の展開が読めない。

あっと驚く仕掛けや犯罪トリックが使われているわけではないが、読み応え十分の一冊だ。

■『謎解きはディナーのあとで』11/05/18UP



東川篤哉 小学館

お坊ちゃま警部とお嬢様刑事と切れ者執事

国立署に所属する警察官風祭と宝生が殺人事件の捜査をするのだが、解決するのは宝生に仕える執事影山という男だ。

主要登場人物は3人、警部風祭は、風祭モータースの御曹司で銀色のジャガーを乗りこなす32歳の独身、会話の端々に自慢が入る男。

捜査に関しては偏見がひどく、優秀というわけではない(・_・).....

刑事の宝生麗子は複合企業宝生グループのご令嬢で、風祭のことを内心すごく馬鹿にしている

彼女の心の声というのがこの小説の最大の読みどころといえるかもしれない。

そして、その彼女が難事件に出くわしたとき話を聞いただけで真相にたどりつくのが執事影山だ。

銀縁眼鏡をかけて、優秀ながらも、真相を見抜けない麗子に暴言を吐く男。

この本には6つの事件が収録されている。

麗子の夕食のあとに影山が事件の真相を解明するところからこのタイトルになっているのだろう。

話の流れは、事件→風祭と麗子の捜査→麗子夕食→影山の真相解明、といったところだ。

風祭と麗子のやりとり、麗子と影山のやりとりがお決まりのパターンとなっている。

事件の登場人物の発言や行動から真相にたどりつけるようになっているので、読者にもやさしい作り。

本屋でおすすめとあったので購入したのだが、たしかにこれはおすすめだ。
 



■『日本野球25人 私のベストゲーム』10/06/17UP



スポーツ・グラフィック ナンバー編 文藝春秋

1980年以降のベストゲームを教えてくれというインタビューに対して日本の野球を代表する25人が答えている。

メンバーは、監督編が長嶋茂雄、王貞治、野村克也、星野仙一。

野手編が、イチロー、清原和博、掛布雅之、原辰徳、ランディ・バース、ラルフ・ブライアント、秋山幸二、落合博満、新庄剛志、古田敦也、松井秀喜。

投手編が、野茂英雄、山田久志、江川卓、斎藤雅樹、阿波野秀幸、桑田真澄、佐々木主浩、工藤公康、松坂大輔、江夏豊。

最後に西本幸雄と江夏の21球が挿入されている。

フィクションの推理小説が好みの自分にとって、野球のノンフィクション作品は異色の選択だ。

野球部のコーチをしているから甲子園は好きだが、プロ野球はそれほどでもない。

WBCは日本を応援したけど、プロ野球は全くといっていいほどみない。

そんな自分がプロ野球をみていたのは小学生のときまでだ。

当時は新聞に乗った選手達を切り抜いてノートに貼っていた。

自分のことはこれくらいにして感想はというと、名選手たちはひねくれ者が多いということだ。

ベストゲームを教えてくれと言ってるのにあれこれ言ってはぐらかしている選手が実に多い。

イチローがその最たる例でイチロー節が炸裂している。

しかし、そのスーパープレーの裏で選手達が何を考えていたのかを記してあるのは実におもしろい。

記憶に残る試合の陰には知られざる苦労があるということだろう。

個人的におすすめの話は最後を飾る「西本幸雄と江夏の21球」だ。

試合を分けた頭脳戦、その考えにいたる経緯を細かに記してあり、その場面を容易に思い浮かべることが出来る。
 


 



■『眠りの森』10/12/02UP



東野圭吾 講談社

若き日の加賀刑事とバレエ団殺人事件

風間という男が殺害された、殺したのは斎藤葉瑠子という高柳バレエ団の若手有望株のバレリーナ♪└|∵|┐♪└|∵|┘♪┌|∵|┘♪。

正当防衛を主張する葉瑠子の供述どおり裏づけ捜査をすすめるが、その後バレエ団の演出家である人物まで殺害される。

捜査をすすめるのは刑事加賀恭一郎(・⊥・)だ。

バレエ団の華やかな印象とはうってかわった閉鎖的な社会に戸惑うも、一人のバレリーナに心惹かれるという悩み多き刑事( ̄へ ̄|||) となっている。

バレリーナの正当防衛の事件に始まる一連の事件の裏には高柳バレエ団の秘密があるのだが、これがとても複雑に感じられるが、種明かしされると意外と簡単な内容となっている。

簡単な事件を難しくみせる著者の力量には頭が下がる思いだが、注目すべきはバレエ団という組織のしくみだ。

バレリーナの知り合いなど全くいないのでさっぱり知らなかったが、大変な苦労があるとのことで、事件よりむしろそっちに興味(⌒^⌒)を持った。

加賀刑事の謎解きと恋の行方も注目だが、バレエ団というものも知ることができるのでおすすめの一冊だ。
 






■『野ブタ。をプロデュース』05/12/10UP



白岩玄   河出書房新社

ドラマとの相違点をあげていく。

未見で、これから読んでみようかなというかたには参考になるのかネタバレになるのかよくわからないが、ラスト部分は伏せる。


@ 登場人物

主人公桐谷修二は同じ。

草野彰はいない。

転校生小谷信子は、この本では小谷信太(男)。

彼の名前とその容姿から「野ブタ」というニックネームを修二が名づける。

まり子はマリ子という表記でドラマとキャラクターはほぼ同じ。

ただし、同じクラスという設定。

他のクラスメイトの名前は全然違う。

修二の両親の登場はない。

弟は存在の描写すらない。

担任は日本史の先生で初老の男の先生。

ドラマでいうところの教頭や本屋の店主など修二を諭す人物もいない。

A 細かい設定

クラスメイトの人数は40名(ドラマでは30名)。

マリ子と昼食を食べる場所は化学実験室のとなり(ドラマでは家庭科室)。

本編の感想ですが、簡潔かつテンポのいい文章だ。

15時のおやつなみにさくさく読み進めることができる。

ページ数もそんなにないので、2時間足らずで読破した。

修二視点のみで彼の人生観がとても明確に描かれている。

しっかりと自分を持っている反面、悲観論者であることが彼の行動などから読み取れる。

ぬくい距離というものもわからなくはないが、誰にでも仮面を被って接するのは大変そうだ。

現に仮面ライダーは本能むき出しで怪人に向かっていくからね。
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