や ゆ よ
■『館島』12/02/10UP
東川篤哉 東京創元社
瀬戸内海の島に立つ館
198X年、建築家で経営者でもある十文字和臣が墜落死した。
場所は瀬戸内海の孤島、横島で、彼が最後に建てた別荘で発見されたのだ。
その別荘は正六角形の形をしている珍しい館だった。
主人公は二人、相馬隆行、26歳、岡山県警捜査一課の刑事と小早川沙樹、私立探偵。
瀬戸大橋がかかる前の島のお話だ。
陸の孤島に閉じ込められての連続殺人事件はもはやミステリーの定番だが、館シリーズ特有の不気味さは全く感じられないユーモア本格ミステリーだ。
著者特有の野球にたとえた地の文の描写は秀逸で野球大好きの自分には(゜ー゜)ニヤリとさせられる場面がたくさんある。
個人的には映画化してもらいたい作品だ。
ゆ
■『誘拐 -KIDNAPPING-』09/01/07UP
五十嵐貴久 双葉社
総理の孫誘拐
〜あらすじ〜
秋月孝介は大角観光に勤めていた。
彼の仕事はリストラを言い渡すこと。
その仕事のせいで娘を失ってしまう。
妻とも離婚し、会社をやめた彼は…。
『交渉人』を読んでとてもおもしろかったのと、新聞でもレビューされていたので買った。
感想は、それほどおもしろくなかったというのが正直なところ。
犯人と警察の交渉を魅せてくれた『交渉人』とは一変、交渉なし。
物語は秋月孝介と首相佐山、そして誘拐事件の捜査指揮を命じられた荒巻の視点から展開していく。
誘拐犯、孫娘を誘拐されうろたえる首相、犯人からの接触を待つ捜査側と読者を飽きさせることのないように工夫はされている。
しかし、基本的には頭脳対決があるわけでもなく、サスペンス色は薄い。
佐山総理を小泉元首相になぞらえて批判しているようにも受け取れる。
というわけで新しい形の誘拐事件ではあるものの、ラストの大どんでん返しのインパクトも薄く、BOOKOFF行き確実な本になってしまった。
■『夢見る黄金地球儀』10/10/21UP
海堂尊 東京創元社
バブル景気の遺産で大騒ぎ
2013年平沼鉄工所の営業担当である平沼平介は社長である父豪介、経理担当の妻君子、そして息子の雄介と暮らしている。
ある夏の日、平介の前に大学時代の悪友ガラスのジョーこと久光穣治が現れる。
ガラスのジョーは平介に桜宮水族館にある黄金地球儀を盗もうという計画だった。
断るつもりだった平介だが、市役所の職員から黄金地球儀の警備責任者に命じられたこともあり、黄金強奪作戦に着手する。
医療物がほとんどだった作者が黄金強奪の話とはやや驚いた。
しかし、主人公の平沼平介はこれまでの主人公同様に貧乏くじを引かされるタイプで、海堂作品の主人公の性格が確実に踏襲されている。
平介をバックアップする組織4Sエージェンシーから、浜田小夜、牧村瑞人の二人が登場する。
ガラスのジョーに転機を与えるきっかけとなったのも書かれてはいないが、白鳥のことだろう。
これまでほどリンクはないものの、豪介親父など個性的なキャラクターが多数で物語を盛り上げる。
医療ものではないがおすすめの作品だ。
よ
■『容疑者Xの献身』06/04/30UP
東野圭吾 文藝春秋
インパクト大の殺人トリック
〜あらすじ〜
隣に住む花岡母娘の元夫富樫の死体の始末を手伝った石神は、母娘が疑われないように偽装工作を試みる。
数学教師VS物理学助教授となったこの対決。
犯人を最初に示し、彼の仕掛けた巧妙なトリックを少しずつ暴いていくというスタイル。
助教授湯川学シリーズ第3弾。
相棒草薙刑事ももちろん登場する。
『探偵ガリレオ』のような科学トリックはなく、正統派の本格ミステリー。
このトリックがすごい。
いつもはトリックを解いた探偵のほうをほめるんですが、こればかりは犯人がすごいとしか思えない。
重厚な人間ドラマ+予想外のトリック、1粒で2度おいしいおすすめの一冊。
■『陽気なギャングが地球を回す』06/08/30UP
伊坂幸太郎 祥伝社
ロマンはどこだ?
強盗四人組のお話。
相手の嘘を見抜く男成瀬、ひたすらしゃべる男響野、超正確な体内時計と卓越した運転技術を持つ女雪子、掏りの名人久遠。
この4人が組んで鮮やかな強盗を魅せてくれる。
物語をひっぱり、謎解き担当の成瀬、物語の核だ。
逃走時の運転担当雪子は、強盗シーンのリアリティを高め、掏りの名人久遠は次の展開への手がかりをつかむ役。
そして、物語に最も関係のない響野、中身のない蘊蓄、嘘、冗談で、物語を盛り上げる。
むしろ彼のしゃべりこそが一番面白い部分だ。
強盗の手口より、強盗犯4人組の騒動っぷりに焦点があてられている。
さらりと読めるライトミステリー。
■『陽気なギャングの日常と襲撃』
伊坂幸太郎 祥伝社
上記の『陽気なギャングが地球を回す』の続編。
冒頭は、成瀬、響野、久遠、雪子の比較的側にいる人物からの視点が4人が描かれている。
4人でワイワイする話に比べると地味だが、4人の意外な一面を見ることができる。
そして、冒頭の4短編の伏線を本編で回収していく構成になっている。
前作を気に入った方は必見。
自分の中では伊坂作品のなかで一番好き。
■『予知夢』
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