咆哮と彷徨の記録

                              

■『ラッシュライフ‐a life‐』08/07/01UP



伊坂幸太郎 新潮社

あなたが好きな日本語は何ですか?

『オーデュボンの祈り』に続く伊坂幸太郎の2作目。

多くの登場人物の運命が仙台で交錯する。

画家の志奈子、窃盗犯黒澤(男)、宗教団体に入った河原崎(男)、心理カウンセラーの京子、求職中の豊田(男)、この5人が主人公。

5人の物語が独立しているようで、密接につながっている。

4人が白人女性から「好きな日本語」をスケッチブックに書いてくれと頼まれるのだが、その順番でそれぞれの時間の流れがはっきりする。

そのため序盤から伏線だらけ。

意味不明な会話や行動の端々に他の人物との接点が隠されている。

収束されていくストーリーはパズルのようでおもしろい。

伊坂幸太郎の作品同士のリンクはというと、『オーデュボンの祈り』の主人公伊藤がちらりと登場する。

■『螺鈿迷宮』07/03/15UP



海堂尊 角川書店

ラッキーペガサス

〜あらすじ〜

留年医大生の天馬大吉は、麻雀の負けにより桜宮病院へボランティアとして潜入を依頼される。

『チーム・バチスタの栄光』『ナイチンゲールの沈黙』でも何度か名前が登場した桜宮病院が話の舞台だ。

田口&白鳥コンビのやりとりをみることができないのが残念だが、“火喰い鳥”白鳥の部下氷姫が登場する。

本作は医大生天馬大吉が語り手となっている。

両親を失った過去をもつ大吉が桜宮病院で死について深く学ぶ過程はとても感情移入ができるが、前2作に比べると断然重い。

前作以上に日本の医療制度を批判していて、次回作をにおわせるラストだった。

もちろん前2作必読だ。

満を持しての登場だった氷姫、自分の想像していた人物とはかなりかけ離れていた。

いい意味でも悪い意味でも期待を裏切られた。

次回作が楽しみだ。




■『ラビリンス〜labyrinth〜』06/12/04UP



ケイト・モス Kate Mosse

訳:森嶋マリ ソフトバンク クリエイティブ

輪廻転生

〜あらすじ〜


2005年のフランス、発掘作業に携わっていたアリスは洞穴を発見し、内側に迷路が彫られた石の指輪を発見する。

迷路の指輪、3つの書、そして聖杯をめぐる歴史小説。

聖杯といえば、もはや最後の晩餐時の杯、キリストの磔刑時に血を受けた杯というのが覆されているが、この話においての聖杯もまた別物。

2005年のアリス、指輪を発見したことによって、謎の集団に執拗に追われる。

一方、13世紀のフランスではアレースが3つの書のことについて父ペルティエから聞かされる。

二人の女性の関係とは、聖杯の正体は、3つの書を守護するものたちとは、これらの謎が二つの時代を収束しながらラストへと向かっていく。

二冊に分けるほどもないという情報量。

情景描写が多く、なかなか話が進まない。

話の核心自体にもさほど興味をかきたてられるというわけでもないため、読み終えるのにとても苦労した。

さらに、ラストの場面が『海賊オッカムの財宝』と同じように想像力がとても必要だったため、寝る前の活動停止寸前の脳には許容範囲をはるかにこえていた。

この本における聖杯の正体に興味のある方がいれば下巻の最後のほうを立ち読みするべし。
 



■『リアル鬼ごっこ』08/05/26UP



山田悠介 幻冬舎

捕まったら殺される鬼ごっこ

〜あらすじ〜

西暦3000年、人口1億人の王国。

500万人の佐藤姓が暮らしていて、王の名字もまた佐藤だった。

同じ名字が多いことを不快に思った王は、佐藤姓を減らすべく、鬼ごっこを計画する。

これまで紹介してきた『Aコース』、『親指さがし』で有名な山田悠介のデビュー作。

映画化もされている。

興味本位で映画公式ホームページを覗いてみたら美少女、谷村美月がコメントしていた。

サイトも"仮面ライダー"を意識してあるようだ。

それはともかく、佐藤さんと国が選抜した鬼による鬼ごっこが王国を舞台に行われるわけだが、読みすすめていても西暦3000年という雰囲気は全く感じられない。

鬼ごっこ中は全国民が乗りものに乗ってはダメということで、走っている描写ばかりで退屈。

計7時間で500万人を100万人の鬼で捕まえられるのか疑問。

と、期待して購入したわりには完全に期待はずれ。

妹はスピード感があったと感想を漏らしていたが、それはただ単に読み終えるのが早かっただけだろう。

『バトルロワイヤル』と似た主人公独白系とはいえ、主人公の心理描写が拙いせいか全く感情移入できなかった。

映画の予告編をみるかぎり、映画のほうがおもしろそうな気がする。

巻末の解説は横里隆さん。

この人による山田悠介レビューが一番おもしろかった。
 


 



■『レインボー・シックス〜Rainbow Six〜』05/12/05UP



トム・クランシー Tom Clancy

訳:村上博基

ネタバレなし。

〜あらすじ〜

元CIA工作官ジョン・クラークを指揮官に対テロ多国籍部隊レインボーが組織される。

この本の著者トム・クランシーは有名なベストセラー作家だそうで、『レッド・オクトーバーを追え!』『いま、そこにある危機』など多数の原作が映画化されているそうだ。

そんなこととは露知らず、大学の図書館の外国人作家の棚にあって『レインボー・シックス』とのタイトルに惹かれ、借りて読んだ。

レインボーはセブンだろと小声でツッコんだことも事実だ。

でも、虹の色って国によって違うからツッコミもまた間違いだ。

虹の話はさておき、英、米、独、仏、イスラエルなど多国籍のメンバーから組織されているためレインボーと名づけられる。

さらにシックスは6で、指揮官を意味する暗号だとかどうとかあとがきに記されていた。

とにもかくにもジョン・クラークのことを指す。

トム・クランシーの本は多数あるようで、順番に読んでいったほうがよさそうだが、そんなことあとがきに書かれても困る。

レインボーが組織されるころ、元KGB将校ポポフは、多額の金でテロリストの仲介を頼まれていた。

『ゲットバッカーズ』でいうヘブンみたいな役割。

彼はもう一人の主人公と言っていいぐらい描写が多い。

彼もまた自分の雇い主についてあれこれ思案する。

また、それらと並行して、とある実験施設では、あるウィルスの人体実験が行われていた。

レインボー、テロリスト、製薬会社の3陣営で構成されていて、登場人物が多い。

想像力を鍛えるにはもってこいの内容だ。

また、エリートのなかのエリートで組織された対テロ部隊ということで、ハリウッド映画の特殊部隊の描写に対する批判がある。

イデオロギーという単語が頻繁に出てくるので、センター試験国語の評論文を思い出した。

文庫本で4冊だが、1冊目でレインボー部隊の背景を十分に描いたせいか後半の追い込み、ドラマの盛り上がり方はすばらしい。
 


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