あ い う え お
■『赤い指』06/12/23UP
東野圭吾 講談社
この著者にしては、さほど重厚さを感じさせない人間ドラマ
〜あらすじ〜
前原昭夫は、妻八重子、中学3年生の息子直巳、母政恵と暮らすごく普通のサラリーマン。
八重子から緊急の連絡を受け、帰宅してみると少女の死体が庭に放置されていた。
東野圭吾の新作ミステリーということで、発売後すぐ購入した。ミステリーというよりも人間ドラマが8割。
少女を殺してしまった直巳をかばおうとする八重子に苦労する昭夫の心理状態などは、丁寧に描かれていて、現実に起こりうるような感じがする。
また、少女遺体遺棄事件の捜査を担当するもう一人の語り手松宮脩平は、新人刑事という設定で、ベテラン刑事の後について事件を追っていく。
彼の視点は我々読者目線に近いため、捜査の進展がとても遅く感じられるが、ベテラン刑事の意味深な発言や行動が最後まで緊張感を持続させる作りとなっている。
事件のトリックどうこうよりも、裏側に潜む真実に驚かされるという内容。
コーヒーブレイクのお供にぴったりの本。
■『悪意』10/04/22UP
東野圭吾 講談社
殺人の動機とは?
バンクーバーへ引っ越す予定だった人気作家日高邦彦が殺された。
現場へかけつけたのは東野作品でおなじみの刑事加賀恭一郎だ。
第一発見者は日高の妻と友人野々口修だ。
野々口はかつて加賀が教師をしていたころの同僚で現在は幼児向けの絵本作家をしていた。
加賀は野々口のある言葉から彼が犯人ではと疑う。
あいかわらずこの著者の作品はすごい。
犯人もすぐに判明するし、殺害方法もすんなりわかるのだが、動機が最後の最後で明らかにされるという珍しいスタイルのミステリーとなっている。
動機に最後まで引っ張る力があるのかと思われるだろうが、この動機が一番の曲者でこの小説の肝となっている。
最後の加賀による解明には度肝を抜かれた。
軽視されがちな動機をトリックの根幹にすえたこの小説は必読である。
■『あの頃のだれか』12/06/27UP
東野圭吾 光文社
短編集
長編とまではならなかったり、長編小説の別タイプといったものの集められた短編集。
テーマがあって統一されているわけではないので、世に出る機会のなかった作品たちを出してしまおう的なものだ。
「シャレードがいっぱい」、「レイコと玲子」、「再生魔術の女」、「さよなら『お父さん』」、「名探偵退場」、「女も虎も」、「眠りたい死にたくない」、「二十年目の約束」
なかでも「シャレードがいっぱい」がおもしろい。
主人公の彼氏が殺されるのだが、その真相には遺産相続が関わっている。
主人公は名探偵じみた行動をとり…。
という内容。
作者にしては珍しい女性視点からのストーリーテリングのため新鮮に感じた。
オチがすばらしいのは「女も虎も」だ。
立ち読みでもかまわないので(※失礼)、ぜひ一読をしてほしい。
まあ、男性読者はすぐには笑えないが。
■『アヒルと鴨のコインロッカー』08/02/28UP
伊坂幸太郎 東京創元社
ボブ・ディランを閉じ込めろ!
〜あらすじ〜
仙台で大学生活をはじめた椎名は、隣人河崎から本屋を一緒に襲おうと持ちかけられる。
裏表紙のこのあらすじを読み、購入した。
もちろんお気に入りの伊坂幸太郎の本であることも理由の一つだ。
話の語り手は2人。
ピカピカの大学生椎名とペットショップに勤める琴美。
ちなみに琴美がいる時間軸は2年前。
現在放送中の『仮面ライダーキバ』が現在と22年前から物語を展開しているが、こちらは現在と2年前からだ。
映画化されて、いつのまにかDVDまで発売されている。
アヒルと鴨のコインロッカー 映画公式サイト
『陽気なギャングが地球を回す』の映画化はまだ分かるとしてもこちらのほうは映画化したら叙述トリックが使えないだろう。
肝心の感想はというと、やはりおもしろい。
この作家の作品は日常では絶対繰り広げられないような会話がぽんぽん出てくるからおもしろい。
とくに例え話がおもしろい。
登場人物の断定的な口調に注目してもらいたい。
ボブ・ディラン好きも相変わらずだし、他作品とのリンクもある。
舞台は同じ仙台なのになぜ現在に琴美はでてこないのか、続きが読みたくなるというよりも読まされてしまう感覚に似ている。
最後に、とりあえずだまされて読んでください。
■『アリアドネの弾丸』11/04/13UP
海堂尊 宝島社
東城大学医学部付属病院で殺人事件
病院長室に呼び出された田口医師、彼にある辞令が渡される。
それは、今度設立されるエーアイセンターのトップ、センター長への昇進だった。
今度の舞台は、東城大学の画像診断ユニットでエーアイセンターが中心となっている。
そして、殺人事件の解決に田口&白鳥コンビが奔走する。
『イノセント・ゲリラの祝祭』以来ということで、宝島社からしかこのコンビの本は出ないのだろう。
今回もオールスターに近いキャストでこのシリーズのキャラクターが多数登場しているΣ(゚ロ゚;)
田口と白鳥を軸に、警察サイドには無声狂犬こと斑鳩、桜宮一族の生き残り小百合、そして、スカラムーシュ彦根とこれまでシリーズで張ってあった伏線が少しだけ回収されている。
今回ショスタコーヴィチという作曲家が出てくるのだが、この著者は音楽家をよく変えている気がする。
音楽にあわせた作品作りなんだろうか。
それはともかく、田口&白鳥コンビがやってくれるのでシリーズファンは必読の一冊だ。
気になったところは、エーアイセンター建設予定地だ。
そこを視察した高階病院長の言葉は、おそらく『ブレイズメス1990』のスリジエハートセンターのことを言っていると思うのだが、そのあたりも出版してほしいところだ。
東城大がエーアイセンターを建設することになったのだが、センター長に任命されたのが、田口という意外な人選。
センター長が画像診断のことを知らないのはまずいということで、島津と親しい技術者友野くんが解説してくれるのだが、その友野くんが死体で発見される。
死因不明の事故死と判断されるが、彼の死は東城大の危機の序章にすぎなかったのだ。
難しい用語や言い回しが多いが、物語にひきこんでいく腕は相変わらずで続きが気になるすばらしい一冊だ。
■『あるキング』10/06/26UP
伊坂幸太郎 徳間書店
ずば抜けた才能は異端児となる
万年ビリのプロ野球チーム仙醍キングスの監督南雲慎平太は今年限りでの辞任が決まっていた。
一方その頃仙醍キングスの熱狂的ファンである山田亮、桐子夫妻は子どもを授かる寸前だった。
最終戦ファールボールをよけたさいに頭を打った南雲監督が息を引き取った時刻、山田夫妻に長男が誕生していた。
彼の名前は王求(おうく)。
この物語の主人公である。
0歳、3歳、10歳、12歳、13歳、14歳、15歳、17歳、18歳、21歳、22歳、23歳、0歳の13章から構成されていて、王求の成長を追っていっている。
この著者の作品の中でも異質とみている。
登場人物同士のおもしろいやりとりが全くといっていいほどないのだ。
個人的にはそれを楽しみにしていたので残念なのだが、筆者の新しい試みなのかもしれない。
あるプロ野球選手の不思議な自伝といった内容である。
■『アルジャーノンに花束を−FLOWERS FOR ALGERNON−』08/04/12UP
ダニエル・キイス Daniel Keyes
訳:小尾芙佐
早川書房
〜あらすじ〜
精神遅滞児として生まれてきたチャーリー・ゴードン、33歳。
伯父の親友が経営するパン屋で雑用係として働いていた。
彼は学習に対するモチベーションが高かったため、ビークマン大学心理学部長ニーハー教授、同大学の精神科医兼脳外科医のストラウス博士が行う人体実験の被験者に選ばれ手術を受ける。
ユースケ・サンタマリアと菅野美穂でドラマをやってましたね。
ニュージーランドのオークランドで語学学校に通っていたとき、World Guideを読み飽きたので、エージェントのオフィスで借りた。
英語ばかりに囲まれてて日本語に飢えていた。
随分前にドラマは終わっているので、説明すると、チャーリーは頭がよくなります。
IQ200近くまでいったようです。
この本はそのチャーリーの日記です。
手術を受けるにさいし、その変化を自分で感じることができるように、日記を書くことを勧められるのだ。
彼が変わるにつれ、周囲の人々がどう変わったのか、彼の捉え方の変化が一目瞭然で、非常に興味深い。
筆者の想像力のたくましさ、研究熱心さには感服する。
タイトルにあるアルジャーノンとはチャーリーと同じ手術を受けたネズミで、その結果迷路をめちゃくちゃ早くクリアする天才ネズミ。
アルジャーノンが先に手術を受けているため、彼の未来=チャーリーの未来なのである。
物語中盤からの悲しすぎる流れに、救いを求め、一晩で読んだ。
ちなみに1週間借りることができたのだが。
これは泣ける。
本だけど泣ける。
古本屋にあったらぜひ手にとってもらいたい。
もしくは図書館とかで借りてもらいたい。
■『あやつられた龍馬‐The Someone Behind Ryoma‐』06/08/21UP
加治将一 祥伝社
操られた日本
坂本龍馬といえば、尊敬される歴史上の人物の一人。
大河ドラマ『新撰組』では江口洋介が演じていた。
土佐弁と豪快な性格が印象に残っている。
薩長同盟、亀山社中、海援隊など日本史においても重要人物の一人。
その坂本龍馬が暗殺されたことは周知の事実であり、犯人については様々な憶測が飛び交っている。
この本はその暗殺犯をラストに発表。
その暗殺犯の正体が意外であるため、その結論に至った過程を幕末の日本、英国諜報部、フリーメーソンとの関わりから証明を試みてある。
秘密結社フリーメーソン、ジェームズ・ボンドに代表される英国諜報部、幕末の日本と知られざる日本の暗部を知ってしまったようで、幻滅した。
もう少し華やかな時代かと思っていたが、やはり光あるところに闇があるということだろうか。
陰謀めいた本は信用してはならないというのが鉄則だが、歴史の教科書もまた変わりつつあるので、著者の仮説を信じたい気もする。
どちらにしても、この本はとてもわかりやすく、説得力もあるので、龍馬暗殺犯の新説を知りたい方は図書館で借りて損はないと思う。
い
■『イノセント・ゲリラの祝祭』09/09/10UP
海堂尊 宝島社
厚生労働省VS医師
リスクマネジメント委員会委員長として高階病院長の懐刀と噂される田口医師に厚生労働省からお呼びがかかった。
ラブコールの送り主はあの白鳥技官だ。
不安を胸に田口は霞ヶ関へ向かう。
医療行政への不満大爆発。
現役医師の著書だけあり、手厳しい。
彼の言い分を代弁する人物が、初登場、彦根新吾だ。
田口、島津、速水と麻雀を打っていた最後の一人だ。
Ai導入の最終兵器として登場する。
彼に対抗する厚生労働省の役人が八神直道だ。
“ミスター厚生労働省”のあだ名を持つ、特技はリスク回避と小物の差配という人物だ。
また、白鳥が大学時代に所属していた“確研”(※ただの麻雀クラブ)のカルテットの一人も登場、白鳥、加納に続いてプリンス高嶺という人物だ。
最後の一人も名前も登場するので次回作に期待する。
相変わらすの田口&白鳥コンビだが、登場人物が増えながらもその輝きは衰えることはない。
海堂ワールドの結末まで目が離せない。
Aiの導入、解剖のあり方といった死亡時医学検索の問題について医療事故調という会議で話し合われる。
医療の現実と医療行政の在り方をテンポ良くかきすすめるこの著者をこれからも応援していく。
■『イン・ザ・プール』 『空中ブランコ』08/06/17UP
奥田英朗 文藝春秋
名医?迷医?
神経科医師伊良部一郎の診察してもらった患者の物語。
それぞれ4つから5つの短編から構成され、1番目のエピソードタイトルが本のタイトルとなっている。
「イン・ザ・プール」、「勃ちっぱなし」、「コンパニオン」、「フレンズ」、「いつまでたっても」
「空中ブランコ」、「ハリネズミ」、「義父のヅラ」、「ホットコーナー」、「女流作家」
さまざまな悩みを抱える各エピソードの主人公達は、伊良部総合病院地下1階、神経科の医師である伊良部一郎の診察室を訪れる。
注射フェチのため、すぐに唯一の看護師マユミに注射の指示をする。
彼女は露出狂で、ズボン着用の看護師が主流のなかスリット入りのミニスカート。
胸元も大きく開けていて、ベンチに座りくわえ煙草で雑誌を読んでいる。
この二人に翻弄されながらも患者達はなんだかんだで悩みが解決されていくという話。
僕の脳内設定では『王様のレストラン』に出演していたときの田口浩正がモデル。
看護師マユミは安良城紅ちゃん。
ドラマ化もされている。
公式サイトはコチラ。
このシリーズはおもしろい。
『チーム・バチスタの栄光』から医療系の小説に注目していたが、これもまた異質。
白鳥技官とキャラクターがかぶってはいるが、伊良部医師は一線を越えている。
いつもならネタバレして伊良部医師がどんな対応をしているのか羅列するところだが、こればかりは読んでもらいたい。
一番好きなエピソードは『空中ブランコ』に収録されている「義父のヅラ」だ。
古本屋でもし見つけたら立ち読みしてもらいたい。
■『インシテミル』11/05/18UP
米澤穂信 文芸春秋
クローズドサークル
20歳の学生結城理久彦は、車を買うためにお金がほしかった。
コンビニでアルバイト雑誌をめくっていると、須和名祥子という女性から声をかけられる。
気品漂う彼女のたたずまいに違和感を感じる結城だが、アルバイト雑誌の読み方を教えることに。
そこにはある奇妙なバイトがあった。
7日間のある実験のモニターになること、時給はなんと11万2千円。
誤植と思っていた結城だったが、興味本位で応募する。
見事モニターに選ばれた結城は暗鬼館(あんきかん)という建物に案内される。
同じように選ばれた11人と実験に参加する。
映画化の帯につられて購入した。
登場人物は12名。
主人公結城、ご令嬢須和名、大学生大迫雄大、その恋人若菜恋花、猫背の釜瀬丈、38歳西野岳、35歳岩井、大学生箱島雪人、真木峰夫、関水美夜、安東吉也、渕佐和子の12人。
彼らが暗鬼館でくつろいでいるところにアナウンスが入り、ボーナス規定の発表が行われる。
それは、人を殺した場合、殺された場合、殺したものを指摘した場合、その補佐をした場合。
ということで人を殺したり、犯人を当てたりしてくれというものなのだΣ(゚ロ゚;)
この現代に殺し合いを要求する実験ということで、被験者たちの行動に意味をもたせようと設定には気をつかったのだろう、ところどころで登場人物たち自身に設定をつっこませているというテクニックが見られる。
ただの脳天気な主人公かと思われていた結城のつぶやきなどが意味をもってくる終盤などかなりおもしろいので映画を見る前にぜひ読んでもらいたい一冊だ。
う
え
■『Aコース』、『Fコース』07/05/25UP
山田悠介 幻冬舎
40分で読める
ゲームセンターに新しく入ったアトラクション、「バーチャワールド」を題材にした小説だ。
いくつかコースがあり、Aコース、Fコースを基にしているため表題のようになっている。
『Aコース』にチャレンジするのは高校3年生の男子5人。
火事になった病院から脱出するというものだ。
『Fコース』にチャレンジするのは高校生の女子3人と中学生の女子1人。
美術館に忍び込みバッジスの『手をつなぐ二人』という絵を盗み出すこと。
どちらも40分ほどで読み終えることができる。
非現実の世界に迷い込んだ高校生の心情というものがストレートに伝わってくるというかステレオタイプ的な現代の高校生を描いている。
立ち読みでも十分読み終えることが可能なので下のリンクは不要な気もする。
10代に人気なのもわかる。
授業時間でも十分読み終えることが可能だ。
■『ABC殺人事件〜THE A.B.C. MURDERS〜』06/05/21UP
アガサ・クリスティ Agatha Christie
訳:中村能三 新潮社
〜あらすじ〜
ヘイスティングズ大尉は、故国イギリスに戻ったさいポワロのもとをたずねる。
ポワロのもとには、ABCと名乗るものからの挑戦の手紙があり、ポワロは心配していた。
ABCからの予告の手紙、死体の側に置かれた鉄道案内が連続殺人事件を示唆する。
犯罪者の人物像から犯人を割り出すという、物的証拠よりも心理的証拠を重視するポワロ、当然、ストーリーは被害者の親類との話、もしくは尋問によって進んでいく。
『オリエント急行殺人事件』と違い、ヘイスティングズ大尉からの視点(&第三者)で事件やポワロの人物像が描写されている。
そのため、シャーロックホームズシリーズのワトスン医師と同じようにポワロへの皮肉、信頼などドラマ性に溢れている。
トリックのほうは、コナンでもインスパイヤされているように、難解。
ポワロの人物像を知りたいというかたにおすすめ。
■『SOSの猿』10/08/15UP
伊坂幸太郎 中央公論
孫悟空の分身
主人公遠藤二郎は家電量販店の販売員だが、副業としてエクソシストをしていた。
ある日辺見のお姉さんに頼まれ彼女の息子である眞人をみてくれとお願いされる。
また、もう一人の主人公五十嵐真はプログラムのバグの調査をする仕事をしている。
彼はある証券会社の社員が起こしたミスの原因を調べることになる。
あらすじだけ書くと、何の話なのか、なぜ孫悟空の文字があるのかと不思議に思うだろう。
話のところどころに西遊記についての記述があり、孫悟空を最初に捕まえた人物が二郎真君というらしく主人公の二郎とかかっているらしい。
最初の話が「私の話」として次が「猿の話」として交互に語られる。
そして二つの話がリンクしているという形式だ。
コミックと連動しているらしいのでそちらとあわせて読むとおもしろいのかもしれないが、この本を読んだ感想はそこまで興味がわかなかった。
エクソシスト、西遊記、因果関係などのキーワードに興味があるかたは読んでみてください。
お
■『王様ゲーム』12/09/30UP
金沢伸明 双葉社
王様の命令は絶対!!
県立玉岡高校1年B組の生徒全員の携帯電話がメールを受信する。
その内容は合コンでおなじみ王様ゲームの指令だった。
24時間以内にその命令に従わなかった場合…。
携帯小説といえば、この『王様ゲーム』が一番に挙げられるだろう。
『バトルロワイヤル』なみのおもしろさを期待して読んだ。
うん、途中で寝てしまった。
確かに続きが気になるリーダビリティではあるのだが、主人公に今ひとつ魅力が感じられないところが残念なところ。
主人公に感情移入して読めなかった。
携帯電話やスマートフォン、電子書籍などで本を読んだ経験がないので、評価していいものかどうかわからないが、少なくとも文庫化しての魅力はあまりない。■『オーデュボンの祈り‐a prayer‐』08/04/13UP
伊坂幸太郎 新潮社
殺案山子事件
〜あらすじ〜
コンビニ強盗で同級生の城山に捕まった伊藤。
連行されるなか逃げ出し、気がつけば萩島で寝ていた。
大人気作家、そして東野圭吾と並ぶMy favorite作家であるの伊坂幸太郎のデビュー作。
伊坂ワールドの始まりはしゃべるカカシ、150年前から外界との行き来を遮断した萩島から。
そこにはある言い伝えが、
「この島にはあるものが欠けている それは外から来た人物が丘で渡す」
伊藤は言い伝えの人物なのだろうか、彼と不思議な島人との交流を描いたミステリー。
島の中という狭い舞台ながらも超個性的な登場人物とリョコウバト、ジョン・ジェームズ・オーデュボン、支倉常長といった歴史上の人物の蘊蓄をうまく絡ませ最後まであきさせないつくりとなっている。
個性的な面々を紹介する。
犬顔の塗装屋、熊顔の船頭、地球の心臓の音を聴いている少女、体重300kg超でその場から動けない女、反対のことしか言わない元画家、人殺しが許されいる男、そして、未来を予測でき、しゃべることもできるカカシ。
こんな風に書くとファンタジー小説が好きな人しか手をつけなさそうだけど、決してファンタジーではないと思う。
なにより伊坂幸太郎氏の作品は現実の中に軽く非現実を盛り込んでさもこれぐらい許容範囲だろと思わせてくれるからおもしろいのである。
『アヒルと鴨のコインロッカー』、『死神の精度』を映画化するぐらいならこの作品を映画化してほしい。
伊藤は加瀬亮さん。
『それでも僕はやってない』のキャラそのままでやれる。
カカシの優午の声は池田秀一さんでお願いします。
おなじみの伊坂作品のリンクだが、後々感想を書く予定の『ラッシュライフ』で伊藤としゃべるカカシの話が、『ゴールデンスランバー』でリョコウバトの話が出てくる。
■『オー!ファーザー a family』10/06/26UP
伊坂幸太郎 新潮社
あなたの父親は何人?
高校2年生の由紀夫は、バスケ部に所属していて1学期中間試験のテスト休み中だった。
彼には4人の父親がいた。
ギャンブル大好きな鷹、女大好きな葵、大学教授で知的な悟、運動が得意な中学教師の勲の4人だ。
彼らと母知代と6人で暮らしている。
そんな彼らと由紀夫の不思議な関係を軸に彼らが住む町で物語が展開していく。
あとがきに筆者が第1期の最後の作品とあるが登場人物たちの独特のセリフ回しは相変わらず健在。
主人公たちの会話を読んでいるだけでかなりおもしろいのだが、今回はそれに加えて由紀夫の身の回りで小さな事件がおきる。
タイトルどおりラストでは父親4人が華麗に由紀夫を救うというオチなのだがそこに至るまでの伏線回収はお見事だ。
個人的には最後の最後に登場した母知代に対して放ったセリフが一番おもしろかった。
背景描写も少なく、さくさく読めるのでかなりおすすめの本だ。
■『親指さがし』07/05/07UP
山田悠介 幻冬舎
短い小説に秘められた真性の恐怖
〜あらすじ〜
20歳の大学生沢武の親友田所由美が謎の失踪をとげてから7年がたっていた。
彼は由美が消えたマンション屋上に向かう。
2006年度に勤務した中学校で面接官の役をやった。
3年生の副担任で進路指導の一環としてやったのだが、そのときの予想質問のなかで、好きな本は?という質問を数多くした。
結構多くの生徒が山田悠介さんの本を答えたので、映画化もされたこの本を読んでみた。
ティーンエイジャーに圧倒的な人気ということだが、20代半ばの自分にはどうだろうか。
率直な感想からいうと怖かった。
親指さがしというコックリさんに似たオカルトチックなゲームを題材にしているのだが、これがまた正体不明で怖かった。
『白夜行』も怖かったが、こちらは真性のホラー小説といえるだろう。
簡単に親指さがしの概要を説明する。
1. 円になって右側にいる人の左手の親指を自分の右手で隠す。
2. バラバラに殺される女性を想像する。
3. 館にいつのまにか移動している。そこで左手の親指を探す。
4. 肩を叩かれても振り向いてはいけない。部屋の中のロウソクを吹き消せば戻れる。
黄泉の国(wikipedia)の話に似ている。
1時間ぐらいで読み終えることができるので、読み応えがあるとはいえないが、真夏の夜のお供にピッタリの一冊だ。
■『オリエント急行殺人事件〜MURDER ON THE ORIENT EXPRESS〜』06/05/20UP
アガサ・クリスティ Agatha Christie
訳:蕗沢忠枝 新潮社
〜あらすじ〜
オリエント急行内で殺人事件が発生、殺された男は、アメリカで有名な犯罪者だった。そして、雪のため立ち往生することになった車内で、ポワロの捜査開始。
ポワロシリーズの中でもABC殺人事件とならんで屈指の名作。
情景描写が全くなく、事件のあらまし、乗客の証言、そして、ポワロの推理から構成されている。
見所はなんといっても犯人のトリック。
今まで紹介した中では、『容疑者Xの献身』と並ぶ難解なトリックだった。
それでは登場人物を簡単に紹介する。
エルキュール・ポワロ/私立探偵/灰色の脳細胞をもっているらしい。
ブック/国際寝台車会社の重役/ポワロに客室を用意したり、事件の捜査に乗り気。
コンスタンチン博士/ギリシア人の医師/検死から犯人像をアドバイスする。
この3人が乗客の話を聞いて犯人をつかまえようとする。
犯行が可能だったと思われる乗客は14人。
決して派手な内容ではありませんが、推理小説、ミステリー好きにはかなり挑戦的なトリックとなっているので、興味のある人は、図書館で借りたり、中古で買ってみて損はない。
■『オルファクトグラム‐Olfactgram‐』07/06/15UP
井上夢人 毎日新聞社
超嗅覚
〜あらすじ〜
完成したCDを持って姉のもと訪ねた片桐稔。
しかし、姉は全裸でベッドにくくりつけられていた。
助けようとするも背後に隠れていた人物に殴打され意識を失ってしまう。
1ヶ月後意識を取り戻すも周囲の世界が違ってみえた。
超嗅覚に目覚めた主人公が姉を殺した犯人を追うという話だ。
これはおもしろかった。
ニオイの世界を視覚でとらえることができるという主人公の嗅覚をもとに、まるで手品のように人の持ち物やさっき食べた物をあてるさまなどとても興味ぶかかった。
物語の大半が嗅覚、嗅覚を手に入れた主人公の感想、そして嗅覚を視覚に変換しての描写につきるのだが、殺人事件の犯人がどうでもよくなるぐらいおもしろかった。
とはいえ、嗅覚をたよりに犯人を追いつめていくラストはかなり盛り上がったので、前半の嗅覚の解明も無駄な描写だったというわけではない。
ただ、犬が感じる世界というものを活字で読むというのも不思議なものだった。
かなり長い部類に入る小説だが、読む価値が十分にある一冊だ。
感想とは全く関係ないが、この著者と同姓同名の子と中学2年生のとき同じクラスだった。そして、生徒会役員の選挙に彼が立候補したとき責任者だった。本 わ 上へ | HOME | 映画の感想 | 研究 | 読書記録TOP | 本 か
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