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■『ジェネラル・ルージュの凱旋』08/04/17UP
海堂尊 宝島社
アクティブフェーズの進化形登場
『チーム・バチスタの栄光』を書いた海堂尊のメディカルエンターテインメント。
感想を書いたのは2作目『ナイチンゲールの沈黙』、『螺鈿迷宮』に続き4作目だ。
ただ、『螺鈿迷宮』は出版社が違うため装丁が全然違う。
話は伝説の歌手水落冴子が倒れた日から始まる。
たまたま居合わせた如月翔子、浜田小夜看護師が東城大学医学部附属病院へと搬送する。
この場面は『ナイチンゲールの沈黙』の冒頭と大体同じ。
つまり『ナイチンゲールの沈黙』と同時進行で起こっていた出来事。
浜田看護師視点からの前作から一転、今回は如月翔子からだ。
彼女はICU担当でICUセンターを統轄するのはセンター部長の速水晃一。
シリーズの主人公田口と大学時代の同期で、ジェネラル・ルージュ(血まみれ将軍)の異名を持つ。
バチスタスキャンダルのさい、リスクマネジメント委員会委員長に就任した田口のもとへ、速水が特定の医薬品メーカーと癒着しているという告発文書が届く。
本作は田口、如月、ICU師長花房、ICUセンター副部長代理佐藤の視点から。
もちろん火喰い鳥こと白鳥も登場する。
そして、噂の白鳥の部下氷姫こと姫宮も登場。
『ナイチンゲールの沈黙』と重なる部分があり、田口、白鳥の出番が少ないので、序盤はやや退屈したが、中盤から後半にかけての倫理委員会、リスクマネジメント委員会の話し合いで爆発、夢中で読み終えた。
『チーム・バチスタの栄光』も上映中で絶好調のこのシリーズはぜひ読んでもらいたい。
読む順番は出版順でお願いします。
ちなみに妹がこの本を読みたいと言い出したため、『チーム・バチスタの栄光』からシリーズ全部貸した。
しかし、『ジェネラル・ルージュの凱旋』だけでいいと。
この本から読んでもおもしろさ7割カットだと言ったが、聞く耳もたず、結局読まずに返してきた。
『ダ・ヴィンチ・コード』も貸したが読まずに返却。
親父も貸してくれと言ってきたので、貸したのだが読まずに返却。
妹と親父は、私に自分のオススメの本を貸しつけて、読ませて感想を求めてくるくせに、自分から借りた本は読まないという理不尽ぶり。
私の本を借りて読んでくれるのは叔母だけである。 |
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■『死神の精度』06/07/02UP
伊坂幸太郎 文藝春秋
死神はつらいよ
〜あらすじ〜
人間の病死、自殺以外の死を判断し、その人物の死を見届ける死神・千葉。彼が調査することになった6人の人間の物語。
『ブリーチ』、『デスノート』と死神を取り扱った漫画は数あれど、この本における死神の基本スタンスは全く別物。
人間の姿に変わり、対象となる人間を調査。
といっても点数付けをしたりといった細かいマニュアルがなく、あくまでも死神の主観で、可か見送りをきめる。
可ならば、翌日に死亡、見送りならば、死ぬことはない。
そんな死神・千葉が関わる人間たちとの物語は6つの話で構成されている。
「死神の精度」、「死神と藤田」、「吹雪に死神」、「恋愛で死神」、「旅路を死神」、「死神対老女」。
帯に記されたキャッチコピーは、「音楽だけが俺たちの魂をゆさぶる」。
死神は音楽を偏愛しているという設定になっていて、千葉が音楽に聞き入るシーンが何度も見られる。
作中ではあくまでも“ミュージック”と表記されていて、なんらかの意図、メッセージが込められているようだが、残念ながら読み取ることはできなかった。
この本の最大の特徴は、死神のお仕事日記と化しているところで、死神という人間とは全く異なった不死の生物からの視点を用いているところ。
人間が死に対して意識が低いところや、自己啓発に無関心なところなど、人間から距離をおいた冷静な人間観察には納得させられるところが結構ある。
「旅路を死神」の一部分。
人間は、何を見ても人生と結びつけるのだ。
確かにと納得した。
そして、『グラスホッパー』といい、この『死神の精度』といい、死と深く関わる話なのに、全く重苦しさがないところが著者・伊坂幸太郎さんの特徴といえるかもしれない。
決して軽々しくなく、感動的でなく、同情を誘うでもなく、あくまでも真実として、ありのままに描いているからなのかもしれない。
ページ数も少なめで、サクサクと読みすすめることができる。
日本語独特の言い回し、レトリックに苦労する死神をみたいかた、自分は雨男、雨女だという方、そしてこの梅雨の季節にぴったりの一冊。 |
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■『使命と魂のリミット』07/04/18UP
東野圭吾 新潮社
医療ミスをテーマにした人間ドラマ
〜あらすじ〜
研修医の氷室夕紀は、帝都大学病院の研修プログラムを受けていた。
彼女は、父の死に疑問を持ち、心臓血管外科医を目指していた。
一方、同病院に入院しているアリマ自動車社長島原総一郎に恨みを持つ直井穣治は、看護師真瀬望から彼の情報を得て、復讐の機会をうかがっていた。
父の手術を担当した西園教授も同病院に勤務していて、夕紀は彼の手術ミスを疑っている。
研修医の仕事に忙殺されながらも、父の死の真相をさぐる。
しかし、西園と夕紀の母が恋人同士になったことで、彼女の疑いは濃くなっていく。
彼女は真相を知ることができるのだろうか。
そこに刺激を加えるのが、復讐を企てる直井穣治。
彼は島原総一郎を殺すために行動する。
そして、刑事七尾。
夕紀の父のことを知っていてかつ、一匹狼の刑事。
レイモンド・チャンドラーが描くマーロウみたいなやつだ。
夕紀、直井穣治、七尾とこの3人の視点から話はすすんでいく。
序盤の丁寧な人物描写のおかげで、クライマックスにかけての盛り上がり、登場人物の心理状態のうつりかわりはすさまじい迫力だ。
夕紀の亡き父の言葉などいくつもの伏線によって主題としてかなりのインパクトだ。 |
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■シャーロック・ホームズ■05/06/27UP
コナン・ドイル Sir Arthur Conan Doyle
訳:延原謙
『緋色の研究』『四つの署名』『シャーロック・ホームズの冒険』『シャーロック・ホームズの思い出』『バスカヴィル家の犬』『シャーロック・ホームズの帰還』『恐怖の谷』『シャーロック・ホームズ最後の挨拶』『シャーロック・ホームズの事件簿』
自分の考え方に多大な影響を与えた作品。
コナン好きの自分にとって、コナンが尊敬するシャーロック・ホームズにも興味があった。
そんなこんなで読み始めたこのシリーズだが、まずシャーロック・ホームズの性格、人柄に驚いた。
自分の想像ではコナンの大人バージョンだと思っていたので常識ある人物かと思っていたからだ。
作品についてみていくと、『緋色の研究』『四つの署名』『バスカヴィル家の犬』『恐怖の谷』が長編小説で、残りが短編集。
タイトルは新潮社文庫の表記にしたがい、おすすめの読む順番を引用した。
この順番のほうが年を重ねる二人と著者の筆の円熟度も増していっておもしろいと思う。
内容は彼の相棒ジョン・ワトスン博士からみたシャーロック・ホームズについての話で、彼に振り回されっぱなし。
パシリとまではいわないが、結構毒を吐いている。
短編のいくつかにシャーロック・ホームズ本人視点、第三者視点があります。しかし、外伝的なものであって、ワトスン博士が描くシャーロック・ホームズが一番おもしろい。
ワトスンの視点が我々読者との視点と重なりやすいので、ホームズの魅力をめいいっぱい楽しむことができる。
世界最高の名探偵ということでこのシリーズを読んだことがない人にとっては多少の誤解があると思う。
はっきりいって変人だ。
一番好きな作品は二人の出会いを描いた『緋色の研究』。 |
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■『終末のフール』07/03/24UP
伊坂幸太郎 集英社
小惑星衝突まであと3年
「終末のフール」、「太陽のシール」、「籠城のビール」、「冬眠のガール」、「鋼鉄のウール」、「天体のヨール」、「演劇のオール」、「深海のポール」
8年後、小惑星が地球に衝突すると発表される。
そして5年がたった仙台市ヒルズタウンに住む人たちの8つの物語。
8つの短編からなり、舞台、設定は一緒で、語り手が替わる。
死を3年後に控え、受容しつつある者、足掻く者など様々な登場人物が、死というもの、人生というものについて考える。
各登場人物らがリンクし、交錯する。
3年後に死を控え、人々はどう毎日を過ごすのか、絶望と希望が交わる筆者の書き方は絶妙で、暗さを感じさせない。
もし登場人物と同じ状況に陥ったらどうするだろうか。
まず、農業関係の仕事に従事していなかったことを悔いるだろう。
そして、仕事を辞め、自家栽培できる野菜を育てる。
小惑星衝突まで生きたいと思うだろう。
電気が供給されれば、このサイトも存続し、可能なかぎり更新しつづける。
まだ感想を書いていない本、映画があるので、1年はもつかもしれない。
もしもシリーズで、「明日死ぬなら、何をしますか?」みたいな質問があった気がするが、8年というのは長すぎてピンとこない。 |
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■『重力ピエロ』06/11/28UP
伊坂幸太郎 新潮社
親子の絆とは
〜あらすじ〜
遺伝子関係の仕事に就いている泉水は弟の春から、ここ最近連続しておきている放火とグラフィティアートに関係があると聞かされる。
語り手である泉水は、途中参加が嫌いな好奇心旺盛な人物で、彼の視点から物語は語られる。
登場人物は、弟春、父、葛城、探偵黒澤、郷田順子と少ない。
放火犯はなぜ、グラフィティアートを書き放火するのか、父の癌、謎の美女郷田順子の不可解な行動と見逃せない内容だ。
また、遺伝子に関しての蘊蓄、映画作家ジャン=リュック・ゴダール、春と泉水の軽快なやりとりなど読みやすくもあり、内容もあるというお得な本だ。 |
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■『宿命』07/02/06UP
東野圭吾 講談社
宿命の対決
〜あらすじ〜
瓜生電子工業の須貝氏清が何者かにボウガンで打たれ死亡する。捜査に乗り出した和倉勇作の前にはかつてのライバル瓜生晃彦がいた。
私にもライバルがいた。
自分だけが意識しているだけだったと思うが、実力も同じぐらいか自分以上で尊敬でき、目標でもあるという人物だった。
この本のように宿命のライバルがいたかと聞かれたら、それはいないと答える。
互いに競い合い、お互いを高めあうライバルの存在は貴重だ。
しかし、運命に導かれるような宿命のライバルがいるという経験はめったにないと思う。
本作は、医者の道を諦めた刑事和倉勇作と瓜生晃彦の因縁の物語だ。
といっても『デスノート』の夜神月とLのように表立って火花を散らすわけではない。
和倉視点とそのかつての恋人であり、晃彦の妻である美佐子の視点から物語は進む。
和倉と晃彦に何があったのか?美佐子の運命は?最後のページに収束されていく傑作ミステリーだ。 |
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■『人格転移の殺人』07/06/15UP
西澤保彦 講談社
人格転移装置で空騒ぎ
〜あらすじ〜
苫江利夫は、ショッピングモール内のチキンバーガーの店にいた。そこで大地震がおき、近くにあったシェルターに逃げ込んだ。
意識を失った江利夫だったが、目をさましたとき自分の体に異変がおきていた。
実はシェルターというのが、人格転移装置だった。
登場人物は、社会心理学者ダニエル・アクロイド博士、人格交換が行われる第二都市の研究をしている。
同研究員ジンジャー・ピンホルスター、CIAの情報部員デイヴ・ウイルスン、以上がプロローグの登場人物たちだ。
彼らは人格転移装置の仕組み、ルールを説明してくれる。
本編で起こる殺人事件の根幹となるシステムの説明だ。
システムの説明がないまま事件が立て続けに起こっても読者には意味不明なので、これは適切な構成だったろう。
事件の謎解きとあわせてシステムの説明だったらとてもじゃないがついていけなかった。
本編の登場人物は、苫江利夫、33歳、某総合電機メーカー勤務。
この事件の記録者だ。
つづいてボビイ・ウエッブ、16歳アメリカ国籍、黒人。
江利夫たちがいたチキンバーガー店の手伝いをしている。
つづいてランディ・カークブライド52歳、アメリカ国籍、白人、スケベ親父。
ジャクリーン・ターケル、24歳、英国人、女優志望。
アラン・パナール、20歳、フランス人、学生。
ハニ・シャディード、28歳、アラビア人、アパート経営。
窪田綾子、学生、大地震でシェルターに逃げ遅れ死亡。
これら7人が主な登場人物だ。
なんとなく映画の『CUBE』に似ている。
それはともかく、窪田綾子を除いた6人が人格転移装置のなかにシェルターと間違えてとびこんだために人格が転移する。
ナメック星でギニューと悟空が入れ替わったやつの6人バージョンというわけだ。
彼らは隔離され、今後のことを話し合うことになるのだが、夜が明けた時、誰かが殺されている。
そんなわけでとてもややこしい設定で、感情移入することは難しいが、他人の不幸は蜜の味というか、体が替わって混乱する登場人物たちがとても愉快に感じられた。 |
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■『ジーン・ワルツ』08/06/15UP
海堂尊 新潮社
産婦人科の危機
〜あらすじ〜
帝華大学産婦人科学教室の助教授曾根崎理恵。
不妊治療を専門としていて、週1回マリア・クリニックに非常勤医として通っていた。
しかし、マリア・クリニックは閉院が決定していた。
最後の妊婦は5人だった。
今回は出版社も今までも異なっているが、これまでのメディカル・エンタテインメント路線から一転、産婦人科医不足の実態に深く切り込んだ社会派作品となっている。
笑うところなど皆無、すさまじいまでの厚生労働省批判だ。
それをうけておなじみ白鳥技官の医療過誤第三者的どうてろこうてろが設置されたことになっている。
話の本筋はマリア・クリニックの妊婦達の経過と主人公の発生学の講義。
出産に関する物語ということで、読者の理解を助けるべく発生学の講義が妊婦達の経過と同じ時系列で書かれているのはとても親切。
僕の中の脳内妄想では、曾根崎理恵のモデルは松雪泰子、同僚の清川准教授は中村トオル。
『救命病棟24時』の影響が強く残っている。
ジーンつながりだが竹内結子はキャラが違いすぎる。
この本を読んだあとだとAVの中だしものとか不謹慎すぎると感じる。
嫌いではないが。
ちなみに本作は一応『チーム・バチスタの栄光』などに登場した人物たちの登場は全くない。
第2作目『ナイチンゲールの沈黙』の小児科医副島真弓の名前がちらっと出るぐらいで、関連性はほぼない。
ゲスト出演ぐらいあってもよかったのに。
母がヨン様に熱中していることはこのサイトでもたびたびとりあげてきたが、ヨン様関連の雑誌はほぼ100%買い揃えるほどだ。
『女性自身』6月24日号(※最近初売?)をたまたまみていたら、福島県立大野病院産科医逮捕事件についての記事があった。
この本のこともあったので、しばらく読みすすめていたら、1年後に逮捕とか、1万件に2,3件のことだとかどこかで聞いたことあると。
熟読してみたら、びっくり、なんとこの本のなかの登場人物マリア・クリニックの病院長の息子の事件とそっくり。
著者はこの事件の医師を擁護するために書いたのかとわかった。
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