咆哮と彷徨の記録

                              

■『魔王』06/12/16UP



伊坂幸太郎 講談社

悪魔の能力

〜あらすじ〜

両親を早くに失くした二人の兄弟。考察を得意とする兄、記憶力を自慢とする弟潤也、そんな二人と同棲する潤也の恋人詩織。

彼らの前に現れた圧倒的な存在感を放つ政治家。

時代の流れはどこに向かうのか。

簡単にあらすじを書いてみましたが、全く意味が分からない。

最後まで夢中で読んで一気に内容を忘れてしまう。

そんな身体の髄まで染みこむというより身体をすり抜けていった感のある本だ。

考えるのが好きな兄は、新進政治家犬養の強いリーダーシップに危機感を抱く。

とても抽象的な描写だが、ファシズムの浸透を恐れているということでいいと思う。

彼は、様々な人物と論じ合う中で、不思議な能力を手に入れる。

それは、他人に自分の考えを言わせるという能力。

『HUNTER×HUNTER』でいう操作系、『スター・ウォーズ』のフォースに近い能力のようだ。

そんな兄の話が前編、後編は弟潤也の恋人詩織の視点から語られる。

現在の日本の政治、政治に無関心の日本人の若者、飽きやすい日本人の性質をさらりと皮肉っている。

小泉元総理のことを言っているような気がした。

一気に一晩で読んだこの本、弟の能力を紹介していないが、気になるというかたはぜひご一読を。

紙を25回折ったらどれぐらいの厚さになるのか。みなさん知っていますか。

■『魔球』08/05/07UP



東野圭吾 文藝春秋

本の中の魔球

〜あらすじ〜

春の選抜高校野球、大会ナンバーワン投手、須田武志を擁する開陽高校は優勝候補の亜細亜学園を1−0でリードしていた。

場面は9回裏二死満塁、バッターボックスには唯一須田からヒットを放っている四番打者。

カウントツースリーまで追い込むも須田は打たれると確信していた。

そして最後に投じた球は…。

魔球と聞いてまず思い浮かぶのは、やはり『巨人の星』の主人公星飛雄馬が編み出した消える魔球だろう。

消えるわけねーよとは思いつつも最後まで読んでしまう設定だった。

花形に完全攻略されたが、自分なら見えていても打てない変化球だったと思う。

それはともかく、スポーツマンガのなかでもなかなかネタの尽きない野球のなかで魔球は野球少年の憧れだ。

野球の入門書をみながら様々な変化球を試した少年時代を思い出す。

結局自分に投手の才能はなかったらしく、バッティングピッチャーが関の山だったが、卓球ボールではうまくいった。

話はだいぶそれた。

この本はそんな"魔球″を題材にしたわけではなく、あくまでも須田が最後に投じた球が殺人事件と深く結び付いていたというだけの話。

ジャンル的にはスポーツミステリーとなるのだろう。

剣道、スキーときてついに野球が登場。

正直殺人事件とかどうでもよく、須田が投じた球の真相が知りたくて読んだ。

読者の期待を裏切らない描写力と構成はまさに魔球、画がないぶん不利にみえてまんまとしてやられた感じだ。

映画化が予定されている『容疑者Xの献身』の次にお気に入りの作品だ。

■『マディソン郡の橋〜THE BRIDGES OF MADISON COUNTY〜』06/04/28UP



ロバート・ジェームズ・ウォラー Robert James Waller

訳:村松潔 文藝春秋 

単行本の帯にひかれた

ロバート・キンケイドとフランチェスカ・ジョンソンのとある4日間の話を語り手が本にまとめたもの。

ブックオフで買うキッカケになったのが帯。

「アメリカでは450万部を超えました 日本でも150万人が読んで泣いています それは この本があなた自身の物語だからです」




この本があなた自身の物語だからです




どんな比喩だと。

半ばけんか腰になって衝動買いした。

上のは誇張帯だとしても、序盤は官能小説かと思えるほどエロかった

もちろん上品なエロさだ。

4日間の不倫を正当化するためオブラートに包んだ感じなので、さわやかなエロさ。

そんなに長くもなく、さらりと読めるので、こういう愛の形もあるということを知るのもいいかと思う。

ただ、序盤はエロい

■『魔笛』12/04/24UP



野沢尚 講談社

照屋礼子の生涯

渋谷スクランブル交差点で爆破テロをおこしたメシア神道の幹部照屋礼子は公安から送り込まれたスパイだった。

彼女がどうしてスクランブル交差点を爆破したのか、そして鳴尾良輔巡査部長に逮捕されるに至ったのかを主に照屋礼子本人、鳴尾良輔の視点から描いた作品だ。

2000年の話ということで、オウム真理教がモデルとなったことは言うまでもないだろう。

当時の過熱報道ぶりを全く理解できなかった自分としては、彼らの摘発に乗り出した警察の心中などさっぱりわからなかったのだが、こうして活字で見ると、その大変さがよくわかる。

上で述べているように、犯人である照屋と追う側である鳴尾。

追われる側、追う側から事件の輪郭が形成され、非常に明快なストーリー展開なのだが、そこには公安警察や、メシア神道のボス聖仙の思惑も絡み、最後までハラハラドキドキの展開となっている。

タイトル『魔笛』も重要な局面で出てくるので、楽しみながら読めるのも魅力である。

■『マドンナ・ヴェルデ』12/02/10UP



海堂尊 新潮社

『ジーン・ワルツ』の別視点

山咲みどり、55歳、夫に早くにしなれ、女手ひとつで娘理恵を育ててきた。

ある日、産婦人科医となった理恵から代理母出産を頼まれる。

断ろうとするも過去の理恵のある言葉のことがあり、みどりはしぶしぶ引き受ける。

海堂尊さんの作品にしては珍しく医師視点からではない話だ。

産婦人科医曾根崎理恵の母山咲みどりが主人公だ。

『ジーン・ワルツ』を既読の方はおわかりのように代理母出産の一般人視点からという内容だ。

医師視点からだと代理母出産の合理的考え方は受け入れやすいものの、一般人視点から描かれるとやはり怖くみえてくるからとても不思議だ。

『ジーン・ワルツ』との組み合わせで一つの作品と考えていいようだ。

ぜひセットで読むべき作品である。

個人的には出産についての安全神話などがとても興味深かった。

■『真夏の方程式』12/06/27UP



東野圭吾 文藝春秋

どんな問題にも必ず答えがある

デスメック社から電磁探査についての説明を求められ玻璃ヶ浦へと出向いた湯川。

行きの電車の中で知り合った少年恭平が宿泊する「緑岩荘」について知り…。

ガリレオシリーズ最新作は、湯川が宿泊することになった宿が物語の舞台だ。

自然保護を訴える女性、夏休みに叔父叔母のところに預けられた少年の視点から物語が展開していく。

子ども嫌いを自負していた湯川が恭平と仲良くなる(?)などこれまでにない展開が期待される。

湯川の恭平に対する物言いは難しすぎる気がするが、彼の誠実さ、まじめさはより際立っている。

これまでは、草薙や内海との会話がほとんどだったため、新鮮に感じる。

『容疑者Xの献身』、『聖女の救済』などの驚愕のトリックと比べるとややインパクトにはかけるが、それを打ち消すほどの魅力がある作品。

とくにラストの湯川が少年に諭すシーンがすばらしい。

ミステリーというよりも人間ドラマとして読むほうがいいだろう。

おすすめの一冊である。

■『学ばない探偵たちの学園』11/10/29UP



東川篤哉 光文社

鯉ヶ窪学園探偵部初登場

鯉ヶ窪学園の2年に転入を果たした赤坂通(とおる)は文芸部に入部しようと部室を訪れるもそこにいたのは探偵部の部長多摩川流司と部員八橋京介だった。

彼らの巧みな誘導により探偵部に入部したとおるだったが学園生活を満喫する。

そんなある日、3人が密室談義に花を咲かせていたとき保健室から悲鳴が聞こえる(*ノェノ)キャー

東川篤哉の鯉ヶ窪学園シリーズだ。

主人公たち探偵部が事件解決に向けて奔走するのだが、名探偵コナンのようなものを期待していると大火傷するので注意をε-(´o`;A

トリック事態もおもしろいが、彼らの迷探偵ぶりがよりおもしろい。

とくに部長の多摩川のキャラがきわだっている。

鉄板奉行で屁理屈を言わせたら右に出るものはいないという最強キャラで部員たちをひっぱっていく。

そして彼らの顧問である生物教諭石崎はすばらしい推理力を持っていて、部員たちのまちがった推理を正しい方向へ導いていく。

多摩川の相棒ハ橋はなぜか関西弁を駆使し、多摩川の暴走を抑え込んでいく。

このシリーズの原点ともいうべき作品なのでぜひご一読を。

■『マリアビートル-MARIABEETLE-』11/04/13UP



伊坂幸太郎 角川書店

『グラスホッパー』の続編

『グラスホッパー』の事件、業界で有名だった寺原親子が殺されてから6年がたっていた。

東京駅にいたのは、息子の復讐のため新幹線はやてに乗り込む木村雄一

その木村の息子をデパートの屋上から落とした中学生王子慧

簡単な仕事を依頼されたなんでも屋の七尾

峰岸氏の息子奪還と護送の仕事中の殺し屋コンビ蜜柑檸檬

盛岡へ向かう東北新幹線はやての中で事件がおきる。

この4人の印鑑で章が分かれている。

前作の主人公鈴木も一乗客として登場する。

サブ的に押し屋、そしても名前だけ登場する。

相変わらず登場人物たちの会話は愉快で楽しい。

魅力的なキャラクターがそろっている。

とくに殺し屋コンビ蜜柑と檸檬が機関車トーマスを使ってやりとりするところがとてもいい。

檸檬のトーマス人物評など秀逸だ。

中学生の王子の世の中の見方というのも参考になる。

彼が質問する「なぜ人を殺してはいけないのか」に答える大人たちの答えにも注目だ。

自分ならなんと答えるだろうか。

元殺し屋木村はアルコール中毒で、お酒が手放せなかったのだが、息子の重体を機に断酒した。

アル中は飲んだら終わりという台詞が生々しい。

そしてツキのない便利屋七尾は、仲介してくれる真莉亜との会話がおもしろい。

七尾の失敗談を読むと笑える(>_<)

この話の舞台が新幹線の中だけあって臨場感があるΣ(゚ロ゚;)

映画化も十分可能だと思う。
 



■『ミス・ジャッジ』12/03/24UP



堂場瞬一 実業之日本社

メジャーリーガーと審判

橘由樹は今年、ボストンレッドソックスに移籍したばかりのピッチャーだ。

彼の持ち味はコントロール。

そんな彼の悩みの種となっていたのが、高校、大学の先輩で肩を壊し、審判へと転身した竹本の存在だった。

偶然にも橘の大リーグ初先発の試合で竹本がチーフを務めることになる。

タイトルが示すとおり、橘のある一球に対する竹本のジャッジから物語が紡がれていく。

スポーツを題材にした作品が多い筆者だけに登場人物(スポーツ選手)の心情描写が非常に豊かだ。

とはいうものの橘と竹本の視点から描かれているだけなのだが。

橘の大リーグ移籍1年目のシーズンを通して、橘の選手生活と竹本の審判生活が交互に描かれている。

競技者と審判という同じグラウンドに立っていながら全く違う立場の二人が影響しあうわけだが、どちらのキャラクターも魅力的である。

ただ、二人とも陰と陽でいうと、陰性の性質を持っているため、脇役に陽性のキャラクターが多い。

橘の相棒をつとめる捕手マルチネス、チームリーダーでエースのギブソン、そして監督のホルツマンなどがそうだ。

プレーオフまえのホルツマンのセリフがとくにお気に入りだ。

抜粋すると

俺は勝利が欲しい。ワールドシリーズ優勝のリングが欲しい。ちやほやされたい。オフはテレビ出演で稼ぎたい。孫に話せる自慢話を仕入れたい。それをよく覚えておいて欲しいんだ。よし、さっさとケツを上げて体を動かせ。

■『密室の鍵貸します』11/06/23UP



東川篤哉 光文社

烏賊川市シリーズ第1弾 Welcome trouble!

関東某県にある烏賊川市に住む大学4年生の戸村流平は、就職の内定をもらうが、そのことが原因で彼女にフラれてしまう。

先輩の茂呂耕作に呼ばれ、「殺戮の館」というビデオ持参で自慢のホームシアターを訪れた流平だったが、彼の身の回りでたてつづけに2件の殺人事件が起こる。

そこで姉の元夫で私立探偵の鵜飼杜夫を頼る。

『謎解きはディナーのあとで』でブレイクした東川篤哉氏の長編推理小説シリーズで、鵜飼探偵と砂川警部が謎解きをする物語だ。

今回はシリーズでもおなじみの4人がメインとなっている。

主人公鵜飼杜夫、鵜飼杜夫探偵事務所を経営する私立探偵(*_*)

戸村流平、大学4年生、どこにでもいるいまどきの若者┌|∵|┘

砂川警部、クラゲ天気予報で仕事をサボる中年警部(>_<)

志木刑事、ハンドルと拳銃を握ると危険な若手刑事(>o<")

この4人が騒動を起こしながら真相に迫っていくわけだが、この作品の、いや、この著者の魅力は、地の文にある。

会話もおもしろいのだが、なんといってもその会話を生かした地の文がおもしろい。

巧妙なたとえもからめてテンポよく読ませてくれる(・o・)

あとがきを読んでみるとユーモアミステリ小説というジャンルになるそうだが、これはやみつきになる(>o<")

謎が解けてしまうと、2回目を読む気があまりしないのだが、謎自体も魅力的だが、そこにいたるまでの過程もおもしろいので、何度も読める(ノ^∇^)ノ

かなりおすすめの一冊だ。

■『密室に向かって撃て!』11/06/23UP



東川篤哉 光文社

烏賊川市シリーズ第2弾 

今度は烏賊川市の外れの馬の背海岸に立つ十乗寺邸が話の舞台となる。

前作で殺人の舞台となった白波荘のオーナー二宮朱美が鵜飼探偵の事務所のオーナーでもあったことが判明し、家賃12ヶ月分の滞納分を請求される。

戸村流平は大学を中退し、フリーター&探偵の弟子となっている。

お金持ちの家に、3人の婿養子候補、そして殺人事件と本格推理の様相を呈してはいるが、緊張感なしのキャラクターばかりなので相変わらずサスペンス要素は皆無だ。

もう少し緊張感を煽ってもよさそうだが、そうなると著者の持ち味が失われるのだろう。

今回の主役は密造銃だ。

ズッコケコンビ、砂川警部と志木刑事に向けて発砲された密造銃の残り弾数と銃声がトリックの肝となっている。

ユーモア、ギャグの切れ味はますます鋭くなっているので、買いの一冊。
 


 



■『名探偵の掟』08/06/02UP



東野圭吾 講談社

ミステリーの掟

12の短編から推理小説の裏側を中年警部と名探偵が事件と共に明かしていく。

推理小説と呼べるものは必ずどれかに属しているとされる、12のジャンルをそれぞれ探偵側の苦労とともに紹介していく。

ジャンルは、密室殺人、意外な犯人、孤島など閉ざされた空間、ダイイング・メッセージ、アリバイ崩し、二時間ドラマ、バラバラ死体、童謡殺人など。

オーソドックスな推理小説を決して書かない東野圭吾が世のミステリー作家にエールを送っているのか単なるネタとしてかいているのかよくわからないが、普通におもしろい。

なにがおもしろいかというと、推理小説のお決まり事を痛烈に登場人物たちが皮肉っている点だ。

孤島編ではわざわざ孤立させても、もう流行らないと言ってみたり、ダイイング・メッセージでは犯人の名前を書けばいいのになどミステリー愛好家が誰しも心の中に秘めている本音をズバズバ言っている。

事件やトリックに文句を言いながらも事件は進行していき、最後の謎解きが待っているのだが、これがこちらのはるか上をいく結末になっていて、非常におもしろい。

本格推理物を読み込んでいればいるほどおもしろいと思われる1冊だ。

■『名探偵の呪縛』10/07/21UP



東野圭吾 講談社

天下一大五郎再び…

探偵天下一シリーズを書いていた作者は図書館での調べ物をしていたとき自分の位置を見失い、気付くと知らない街にいた。

かつて自分が書いた天下一探偵と呼ばれる作者は市長の日野から盗掘物の捜索を依頼される。

天下一探偵シリーズの2作目と銘打たれているが、1作目とは様相が全く違う。

短編集のようだった前作と違い、連続殺人事件となっている。

そして著者の東野圭吾氏が初期の本格推理小説からスタイルを変え始めた理由を小説風にしてあるといったほうがいいかもしれない。

そのため、事件の重きをおいてないところが露骨にわかる。

登場人物のネーミングの安易さというか適当さはなかなかすごい。

この東野圭吾氏に興味がない人がよんでおもしろいかどうかといわれるとあまり自信をもっておすすめできない。
 



■『もう誘拐なんてしない』12/09/22UP



東川篤哉 文芸春秋

下関を舞台にした誘拐事件

20才の大学生樽井翔太郎は、夏休みのバイトを求めて、先輩甲本一樹のもとをたずねる。

彼からたこ焼き屋の屋台を任された翔太郎は、北九州市の門司区でたこ焼きを売り始める。

そんなある日、学校帰りの女子高生花園絵里香に助けを求められる。

彼女は離れて暮らす妹の手術費用のために狂言誘拐を翔太郎に持ちかける。

ユーモアミステリといえば、このおかたしかいない。

ご存知東川篤哉氏だ。

今回の主人公は、大学生樽井翔太郎だ。

まあ、どこにでもいる普通の大学生である。

そして、もうひとりの主人公が、花園絵里香の姉、皐月である。

彼女は、家事手伝いだが、実質花園組の親分的存在なのだ。

彼らの狂言誘拐がうまくいくのかどうかが見所、いや、読み所であるのだが、ネタばらしをすると、狂言誘拐自体はどうでもよくなる。

すでにドラマ化されているため、ご存知の方も多いこの作品。

楽しむべきは、やはり著者の魅力があふれている地の文だ。

こればかりはドラマや映像にない著者の魅力なのでぜひ読んでもらいたい。

■『モダンタイムス』10/07/31UP



伊坂幸太郎 講談社

『魔王』の続編?

システムエンジニアの渡辺拓海は浮気を疑われ拷問されていた。

依頼者は妻で、2度目の拷問だった。

浮気を認めた拓海が出社すると、あるプログラムの引継ぎ業務を言い渡される。

仕事を開始するも取引先との連絡もとれない。

仕方なく前担当者で行方をくらましている先輩社員五反田に連絡をとると、「あの仕事はやばい」と残し電話を切られる。

この著者の作品である『魔王』の数十年後が舞台となっている。

そのため兄の死後に能力に覚醒した安藤潤也のその後も少なからず描かれている。

しかし物語の中心はそこではなく、現代の社会体制を批判するメッセージが濃い作品となっている。

主人公以外の登場人物に変わり者が多すぎるので会話自体も相変わらずおもしろい。

ネーミングもあとがきにあるようにかなり適当のようだ。

やや分厚いがおすすめだ。

■『問題な日本語-どこがおかしい?何がおかしい?-』05/11/02UP



北原保雄 大修館書店

日本語教育コースに在籍しているため、正しい日本語を知っておく必要がある。

何より質問にどう答えていいのかわからない。

大学4年生のとき、ある留学生のチューターをやっていた。

週に1度会って日本語についての質問に答えるものだ。

まぁ、個人教師みたいなもんだ。

日本に来て半年で、日本語はかなり出来たのだが、大学院を受験するための勉強をお手伝いした。

論文を書く必要があるため、漢字の読み書きの指導がほとんどだった。

その中の質問に、「最悪の意味は?やばいって何ですか?」というものがあった。

彼の持っていた辞書にはのっていなかったようだ。

最悪はワースト(worst)で、やばいはdangerと媒介語である英語で基本の意味を教えた。

しかし、<危険だ、ピンチだ>に加え、<おいしい>っていう意味が加わっている。

「このカルビやべぇ。」みたいに。

カルビがサイレンサーつきトカレフでも持ってんのか?とつっこんだ自分が過去にはいた。

このように、いろんな表現、意味が加わると学習者(と自分)は混乱するわけだ。

で、ようやく本の感想へ。

最近のおかしい日本語、おかしいと思われる日本語について、正しい使用方法と誤用の理由をわかりやすく説いている。

その語の歴史から始まったりして少々かたいのだが、合間に挿入されている四コマ漫画がとてもおもしろい。

自分が注目したフレーズは「二個上の先輩」。

本来は「二つ上、二歳上」が正しい用法とのことだ。

というわけで、日本語学習者に教えるのが面倒なので日本語の乱れには反対だ。

でも、どこがどう間違って「やばい」に<おいしい>の意味が加わったのだろうか。
本  は 上へ | HOME | 映画の感想 | 研究 | 読書記録TOP | 本 や
SEO [PR] 爆速!無料ブログ 無料ホームページ開設 無料ライブ放送